日本人にもっと、描写力を

こんにちは。「子どものための Critical Thinking Project」を主宰しています、狩野みきです。

今日は、描写力のトレーニングをご紹介したいと思います。

描写力は、日本の学校教育ではあまり教えてくれないようですが、非常に大事なスキルです。たとえば、忘れ物を問い合わせるときにも必要ですし、プレゼンをする場合にも活躍します。さらに言うと、西洋人は子どもの頃から学校で描写訓練を受けているので、彼らと同じ土俵で話をするためには、我々も描写力をつけておかねばならない、ということもあります。TOEFLに描写問題がよく出題されるのも、当たりまえ、なんですね。

以下のトレーニングは私が critical thinking のレッスンで時々行なうものですが、子ども同士でも大人同士でも親子でも、二人一組であれば誰とでもできます。おじいちゃんと孫、という組み合わせも楽しいと思います。また、英語力をアップさせたいという人は、英語で行なってみてもいいですね。

まず、準備するもの(2人分):

  • 紙4枚(裏紙でも画用紙でもなんでもOK。ただし、無地の方がベター)
  • 5色の色鉛筆(クレヨン/サインペンなど、5色を使い分けられれば何でも可)

そして、手順です:

わかりやすくするために、AさんとBさんがトレーニングを行なう、ということにします。

  1. Aさんは5色の色鉛筆(など)を使って、紙一枚の上に自由に絵を描きます。制限時間3分(これ以上長くすると絵が複雑になり過ぎる可能性があります)。
  2. BさんはAさんの絵を絶対に見てはいけません。Aさんが絵を描いている間、Bさんは目隠しをするか、Aさんの絵が絶対に見えない場所に移動します。
  3. 3分経ったら、Aさんは(Bさんに自分の絵を見られないよう工夫しながら)口頭で自分の描いた絵を描写し、Bさんはその描写説明通りに絵を描きます。目標は、自分(Aさん)の描いた絵となるべく同じものを相手(Bさん)に描かせることです。どのような順序でどう描写すれば自分の絵をうまく再現してもらえるか、考えてやってみて下さい。
  4. 役割を逆にします。1-3までのプロセスを逆の立場で行ないます。

終わったら、お互いの絵を見せ合います—この瞬間がけっこうワクワクしておもしろいんです。けっこう似通っている絵もあれば、全然違う絵ができ上がることもあるんですね。どの説明がわかりやすいと感じたか、どこが説明しづらかったか、などお互いに「講評」を述べ合うと描写力の問題点がおのずと浮き上がってきます。描写する側・される側の両方の立場を経験するからこそ見えてくるものもあります。

ところで、描写には一定のルールがあります。大原則は、全体像→細かい点、という手順です。たとえば、紙いっぱいに大きな家の絵を描いたのに、いきなり「ドアは緑色」とか「窓がふたつあって」などと言っても、相手には何のことだかわかりません。まずは「紙いっぱいに大きな家があります」とし、それから、家はどんな形をしているのか、何階建てなのか、色は、窓は、ドアは…とどんどん細かい描写に移っていきます。

また、細かい点を描写する際には、あっちの位置を説明したり、こっちの位置を説明したり、と言う具合に、話があちらこちらに飛ぶのはNGです。「右端にドアがあって、上の方に植木鉢があって、左には花、上に窓があって」などと言ってしまうと、描き手の視点があちこちに飛んでしまい、わかりづらくなります。まずは、たとえば、紙の左側→右側に描写していく、と自分で方向性を決めることが大事です。そして、一貫して自分で決めた方向にそって、スキャナーでスキャンするがごとく、自分の絵をなめるように描写していけばいいのです。

先日、この描写力アクティビティを親子の critical thinking レッスンで行ないましたが、見ていてとても楽しそうでした(当事者お二人はけっこうたいへんだったのかもしれません)。ビジュアルなものに囲まれている現代だからこそ、言葉だけで説明することの大切さを実感できる機会にもなると思います。

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