子どもとcritical thinking:自分だけの思考法を探す

こんにちは。「子どものための Critical Thinking Project」を主宰しています、狩野みきです。

critical thinkingの大事な要素のひとつに「なるべくたくさんの選択肢を出す」ということがあります。より良い選択肢を模索することが critical thinking の目指すところですから、検討すべき選択肢はなるべくたくさんあった方がいいんですね。

先日、小学校低学年の子どもに「答え(選択肢)をなるべくたくさん考える」アクティビティをしてもらいました。「どうして水は大切なの?」「夏にはできるけど、冬にはできないものは?」などの質問に、考えうる限りの答えを出してもらう、というものです。どんな答えでもそれなりの理由さえあれば「正解」なので、答えは無数にあります。

「人生においてせいぜい1回か2回しかできないことは?」という質問に対するある男の子の答えは、「大きな地震が来る」でした。なんとも胸ふさがれる思いがしましたが、一方で、彼がこの答えに至った思考プロセスはとても興味深いと感じました。

子どもはよく、自分の頭の中に浮かんだことをその都度口に出して言いますが、この男の子もそうでした。だからこそ彼の思考プロセスがわかったのですが、要するに、彼の頭の中はこうなっていたらしいんです:ボクの今までの人生で大きな地震が1回あった→ボクはおそらく100歳ぐらいまで生きる→ボクが90歳ぐらいになったら、もう1回大きな地震が来るかもしれない→だから、人生で1回あるいは2回、大きな地震を経験すると言えるのではないか。

この男の子、最初は「人生においてせいぜい2回しかできない」という概念があまりピンと来ていなかったのです。大人なら、「人生においてせいぜい2回しかできないことは何か」と問われるとおそらく、「めったにできないことや、チャンスが2回ぐらいしかないことは何か」というところから考え始めると思います。ところが彼の場合は、「せいぜい2回」という概念を自分なりに咀嚼するところから始めて、自分の人生は何年あるのか、そして、今、自分はその人生においてどの地点に立っているのか、というところから考えたわけです(ちなみにこの男の子、critical thinkingのレッスンを始めてまだ間もないのですが、保護者の方曰く、初回のレッスン以来、色々なことを考えておしゃべりするようになったそうです。)

自分だけの思考法をこのように模索することが、critical thinking の「旨味」でもあります。子どもが自分の頭の中に思考の道すじを切り開いていく様子は、見ていて感動的なものがありますよ。

ちなみに、critical thinkingを数年やっている小学生の女の子にも同じ質問をしてみました。彼女の答えでおもしろかったのは「お母さんになること」。「普通、お母さんになったらそのまま一生お母さんのままでしょ?人生でせいぜい2回、とは言えないんじゃないの?」とツッコミを入れたところ、答えて曰く、「離婚してまた結婚したら、他の子どものお母さんに急になるかもしれないでしょ、だから『せいぜい2回』なの」。

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