「赤いぼうし」

こんにちは。「子どものための Critical Thinking Project」を主宰しています、狩野みきです。

先日、友人が「子どもと一緒に考えるにはうってつけ」と言って「赤いぼうし」(野崎昭弘・著、安野光雅・絵)という本を紹介してくれました。

この本は、数学者の野崎氏が消去法という概念をていねいに子ども向けに教えてくれる、画期的な作品です。消去法だけでなく、思い込みのこわさや文章をじっくり読むことの大切さ、そして、視点を変えることの大事さをわずか41ページ(その半分は安野氏の美しいイラスト)で見事に教えてくれます。

内容は、赤または白の帽子をかぶせられた人が、まわりの人の帽子の色を見ながら自分の帽子の色を推論していく、というものなのですが、ページを追うごとに設定がどんどん複雑になっていきます。子どものみならず大人も真剣に考えてしまう内容で、読んでいる最中は思わず「ちょっと今話しかけないで、考えてるんだから」とムキになってしまうほどです。

私がいちばんムキになってしまった問題をご紹介しますね:

赤い帽子を3つ、白い帽子を2つ持ってきて、3人(AさんBさんCさんとします)の頭にひとつずつ乗せました。他の人の帽子の色は見えますが、自分の帽子の色は見えません。この問題の書いてあるページの反対側には、AさんとBさんがそれぞれ赤い帽子をかぶっている絵があります。まず、Aさんに「あなたの帽子は何色ですか」と尋ねると「わかりません」という答えが返ってきました。次に、Bさんに「あなたの帽子の色は?」と聞くと「わかりました。赤です」と答えました。そこで、問題。Cさんの帽子の色は?

実は、この問題には「落とし穴」がたくさんあるのですが、その落とし穴が非常にうまく隠してあります。答えは明らかにされませんが、本書の末尾にある「解説」を読むと、絵(落とし穴)につられてはいけないこと、落とし穴あるいは思い込みにとらわれないために文章はじっくり読まなければいけないこと、がよくわかります(答えはわかりましたか?)。

また、AさんやBさん、あるいはCさんの立場に立って考えてみることも重要です。Aさんはなぜ「わかりません」と言ったのか、なぜBさんは「わかりました」と言えたのか。

著者は解説でこう書いています。「『もし…』と考えて初めて、本当によくわかってくることもあります。『もし私がお母さんだったら…』とか、『もし私がこの子の立場だったら…』と考えてみると、それまで気がつかなかったいろいろなことが見えてくるものです。それが思いやりへの第一歩です」

このブログでも何度か書きましたが、立場や視点を変えて物事を考えることは、とても大事です。視点を変えれば見え方が変わります。見え方が変わると、全体像も把握しやすくなります。それが、自分とは別の立場にいる人のことを理解する「助け」にもなっていくんですね。

そんな大事なことを40ページほどで子どもにさらっと教えてしまう「赤いぼうし」には、まさに「脱帽」(あ、すみません)。紹介してくれた友人に、本当に感謝しています。

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