◇ THINK- AIDは、「自分で考える力」「伝える力」を育むことを目指し、様々な活動を行っております。フェイスブックページでも、情報をお伝えしております。是非、ご活用下さい。
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こんにちは。THINK-AID狩野です。
もう2月も後半。早いですね。
先日、「グローバル時代に必要な英語力・思考力 〜センター試験廃止で、教育は、受験はどうなる?」というタイトルで講演をさせていただきましたが、その内容を Global Moms Network のコアメンバー E.Nさんがとてもわかりやすくまとめてくださったので、以下に転載いたします(E.Nさん、どうもありがとうございました!)。
2月のGMNマンスリーでは、英語教育の専門家であり、子どもの考える・伝える力を伸ばす「コミュニケーション能力プログラム」の講師としてもおなじみの狩野みきさんにお話いただきました。
講演のあとは会場の『天現寺大使館』でランチ。同じテーマに関心をもつママ同士、のんびりとおしゃべりしました。
◎ 狩野みきさんのお話
<IB校で出された衝撃の宿題とは?>
都内のあるIB 校で中1生徒に出された最初の課題はなんと、
「植物の生存戦略について、A4・4枚にまとめて提出せよ。コピペ不可」
というもの。一体どうすればいいの!?と大人でも頭を抱えてしまうかもしれません。
普段大学で教えている私には、これが日本の大学生が卒論のテーマ選定の際にぶつかるのと同じ問題だと思いました。日本社会では、子どもたちに自分の好きなことは何かをじっくり考えさせる教育をしていないため、大学に入って突然「好きなテーマで」と言われてもそれが見つけられずに悩み、中には泣きだしてしまう学生もいるのです。また、テーマを見つけても、研究の仕方、論の進め方を知りません。そのため、興味のある分野を絞り、テーマに落とし込むための勘所、学習態度、研究姿勢を中学校、高校で教えてくれればいいのに、といつも思っていました。
<問題を見つける力がない子どもたち>
日本では、こういうことになると高校生も大学生も悩みます。考える力の基本である「問題を見つける力」がないからです。
実は、問題を見つけるためにはたとえば以下のようなやり方があり、この中から好きなものを選んで行えば、中学生でもレポートを作成することができます。
① 似て非なるものと比較 (具体的な植物 vs 人間)
② ゴールの見極め(生存の目標は、自分だけの生存?それとも種全体の生存?)
③ 未来予測(想像力)(もし生存戦略が今と違う形になったら?)
④ ブレスト力(良い点と悪い点をリストアップ)
⑤ 調べる、まとめる(これまでにどんな研究があった?)
⑥ 暗黙の前提を探る(生存戦略に必要な条件は?もしそれがなくなったらどうなる?)
⑦ 反論力(自分の説に反論してみる)
⑧ 異なる視点(他の視点から異論を考えてみる)
ダボス会議が2016年1月に発表した「これから必要になるスキルTOP10」の2015年と2020年を比較してみると、「考える力」が4位から2位へ、創造性が10位から3位へ上昇、「感情と向き合う力(Emotional Intelligence)」と「柔軟な認識力」が10位以内に初登場。反対に、「コーディネート力」が2位から5位へ、「交渉力」が5位から9位へ後退するなど、AI(人口知能)と向き合う2020年を意識させる変化が起きていることがわかります。これからは暗記偏重ではなく、問題解決力、考える力が求められるのです。
<考える力と英語>
子どもには「英語の一つでも」と考える親御さんは多いと思います。でも、今の日本で英語を日常的に使っている人は1%のみ、という報告もあります。今後、コンピュータによる自動翻訳/通訳の機能はどんどん発達していくのに、なぜ英語を勉強しなければならないのでしょうか。
実は、英語を学ぶことは考える力とグローバル社会で分かり合える力を身につけるに恰好の手段なのです。グローバル社会は日本社会とはコミュニケーションのルールが異なります。阿吽の呼吸は通用しません。相手に理解させることは話し手の責任であるという「話し手責任」の世界です。英語は話し手責任の言語であり、日本語は「聞き手責任」(話を理解できるかどうかは聞き手の責任)の言語です。異文化コミュニケーションでは話し手責任になるしかありませんが、日本の学校教育は聞き手責任が前提となっており、話し手責任を学ぶには英語が格好の「先生」になるのです(主語は省略しない、結論を先に言う、視点や時制などの「絶対的な基準」がある、などの英語の特性は、話し手責任の大事な要素)。
<帰納法と演繹法>
また、英語文化は「帰納法」的な考え方を好みます。個別の事象から結論を導き出すわけですが、このような結論は絶対的なものではありません。違う事象が加われば結論は変わりますし、いろいろな結論が導き出されます。
一方、日本の教育は演繹法的です。一般原則を最初に教え、それに基づいて練習問題を解く、という順番です。
小学生まで日本で演繹法的な教育を受けてきた子どもが、IB校などで海外の教科書を通して帰納法的な指導を受ける—すると、個々の例から一般的な規則を見つけることに慣れていないため、知識が身につきづらいという現象が起きます。海外の教科書を利用する場合は、指導者や親はそのことを理解しておく必要があります。学校の先生にも、日本語と英語のそうした違いを理解して指導してもらいたいと思います。
<考える力をつけるために家庭でできること>
未来を予測する力をつけ、子どもが大事な選択をできるよう、「(10歳くらいの子どもなら)15歳のあなたはどう思うかな?」と問いかけてみてはいかがでしょうか。
また、What’s important now? などと問うことにより優先順位を決めさせることが大事です。日本人は、優先順位をつけてゴールを一つに絞ることが不得手です。因果関係をはっきりさせ、ゴールを決定できるようになるためにも、英語学習は有効です。
<Q&A>
Q 考える力を養うのに英語を学ぶことは有効だというお話がありましたが、ご自身のお子さんに中学生になるまでとくに英語教育をされなかったのはなぜですか?
A 軸になる母語がしっかり身につくまでは外国語はやらせない方針でした。考えることは、言葉を使ってすることで、第一言語でなければ考えを深められません。日本語で対話をたくさんすることで、我が家の子どもたちは語彙と西洋的な論理力がつきました。日本語で意見が言えないのに英語では言えるということはないです。また、私は帰国子女ですが、海外に出たのは中2~高2の3年間です。中学以降から始めても遅くはないと思います。