月別アーカイブ: 2011年11月

「理由を考る子ども」を育てるには

<お知らせ>
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こんにちは。「子どものための Critical Thinking Project」を主宰しています、狩野みきです。

「理由」を考えることが critical thinking の第一歩です、といつもこのブログでも書いていますが、子どもに「どうして?」と理由を尋ねても、まるで答えを言ってくれない、というケースもあります。

子どもが理由を口に出さない「理由」は様々で、「純粋に理由が思いつかない」「内容が理解できていない」ということもありますし、レッスン中であれば「緊張しているから」ということもあり得ます。こういう場合はたいてい、もう一度わかりやすく説明した上で「どんな理由だって正解だから、はずかしがらないで言ってみて、一生懸命考えることが大事だよ」と言ってあげると、本当に一生懸命考えて何らかの理由を言ってくれることが多いと感じています。

一方で、「面倒くさい」から理由を言いたくない、考えたくない、という子どももいます。「面倒くさいなぁ」と思いがちな性格や年齢、というのもあると思います。私自身、面倒くさがりなので、こういう子どもの気持ちは理解できるんです。

面倒くさがる子どもにどう「理由を考える」ことを促せばいいですか、と時々保護者の方から質問を受けるので、以下、私の個人的な考えを書かせていただきますね。

面倒くさがる子どもに「理由を言いなさい」と言い続けると逆効果となる可能性が高いので、無理強いはNGですよね。では、どうするか。まずは「理由を紙に書かせる」という代替案が考えられます。「しゃべる」ことがそもそも面倒くさい、あまり好きではない、というお子さんの場合には書かせることは効果的かと思います。でも、やおら紙を出して「はい、ここに理由を書いて」と言うのは何やら事情聴取あるいはテストのような趣があるので、日頃お子さんと交換日記のようなものをつけて、そこで理由を根気づよく引き出してみる、というのはどうでしょうか。

もうひとつは、大人自身が「理由を常に考える人になる」ということです。例えば、今日のお味噌汁はいつもよりもおいしくできたな、と思ったら「今日のお味噌汁、いつもより上手くできちゃった、なんでかなぁ」と独り言のように言ってみる。あるいは、「今朝はずいぶんと空が暗いね、どうしてかなぁ」とつぶやいてみる。

自分でこの後適当な「理由」をつぶやいてもいいですし、何も言わなくてもいいと思います。大事なのは、子どもに「理由を考えるって普通のこと、日常的なことなんだよ」と大人が態度で示してあげることだと思っています。

横断歩道は信号が青になってから渡るのよ、と子どもにいくら教えても、その当の大人が信号無視をしていては、子どもは「信号が赤でも渡っていいんだ」と思ってしまいますよね。これと、理由を考えるクセもある意味同じだと思います。つまり、いくら子どもに理由を考えなさい、と促しても、大人の方が理由を考えない(あるいは考えていても、それが周りの人にはわからない)ようであれば、子どもは「理由は考えなくてもいいんだ」と思ってもおかしくないと思うのです。

ちなみに、私は朝から晩まで「どうしてかなぁ」を連発して、わが子たちに少々うるさがられることもあります。うるさがられるほど言うのは考えものですが、自分の「考える力」を伸ばすためにも、大事なのは「どうして」と思う心を持ち続けることではないでしょうか。

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脳と失敗と子どもの「正しい」ほめ方

こんにちは。「子どものための Critical Thinking Project」を主宰しています、狩野みきです。

先日このブログで失敗の重要性について書いたのですが、それを読んだ友人が、アメリカで最近発表になった「失敗に関する研究」について教えてくれました。失敗と脳の関係に関する、とてもおもしろい研究です(私はこれを読んで、脳科学者の茂木健一郎さんが「日本に元気がないのは失敗が許されないからだ」とおっしゃっていたことを思い出しました)。

今日はこのアメリカ発の研究内容と、その研究内容と結びついている「子どものほめ方」について書きたいと思います。

まずは、失敗と脳の関係についてです。

人間は失敗をおかすと、その直後に脳内で2つの反応が起こるのだそうです。第一の反応はネガティブな反応。ミシガン州立大学の研究報告によると、この反応は失敗のo.05秒後に起こるとか。

ところが、失敗後0.1-0.5秒経つと、今度は脳内にポジティブな反応が起きるそうです。何がいけなかったのか、などと失敗に注意をはらいだした時にこの反応が起きると言われています。

このポジティブな反応の出方は人によって様々ですが、原則、「人間、努力したってたいして成長できないよ」と思っている人よりも「がんばればもっと成長できる」と信じている人の方が圧倒的に「脳内ポジティブ反応」を多く出すのだそうです。

まずは強い脳内ネガティブ反応を出し、続けて、一貫性のある脳内ポジティブ反応を多く出す人の方が、次から間違いをおかしづらくなる、ということもわかっているようです。私は脳科学のことはよくわかりませんが、この報告を読む限り、どんどん失敗して「どうして間違えちゃったのかな」と建設的に考えることが成長の第一歩だ、ということが脳科学からもわかるということだと思います。

そして、この失敗後の「脳内ポジティブ反応」は、今日の第2のテーマ、「子どもの正しいほめ方」につながっていきます。

こちらは、スタンフォード大・心理学教授の Carol Dweck 氏らの研究が明らかにしたことですが、子どもが何か問題を解いた時に「頭いいのね」(You must be smart.)とほめられた場合と、「がんばったのね」(You must have worked hard.)とほめられた場合とでは、その後の伸び方がまるで変わってくる、というのです。

「頭いいのね」と言われた子どもは、これからも「頭がいい」とまわりから思われたいという気持ちが強くなるため、難しい問題にあまりチャレンジしなくなるそうです。間違えることによって「本当は頭よくないんだ」と思われたくないからですね。間違えることのない「安全ゾーン」にい続けようとするわけですから、学ぶことも当然少なくなります。

一方、「がんばったのね」と言われた子どもは、「がんばった」こと自体をほめられたという認識があるので、色々なことにチャレンジするようになるのだそうです。そういう子どもは当然、失敗から学ぶ率も高いようです。一方、頭の良さをほめられた子どもは、一度失敗すると「失敗したのは頭が悪いからだ」と思ってそれ以上学ぼうとしない、というのです。

おもしろいことに、頭の良さをほめられることに慣れている子どもは、「人間、努力したってたいして成長できないよ」と思う傾向があり、一方で、がんばったことを評価されている子どもには、「がんばればもっと成長できる」と信じるタイプ—つまり、失敗した後の脳内の「ポジティブ反応」がたくさん出るタイプ(失敗についてきちんと吟味するタイプ)—が多いのだそうです。

研究報告がすべて、だとは思いませんが、ちょっと考えさせられてしまいますね。

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