「自分らしさ」って何?

こんにちは。「子どものための Critical Thinking Project」を主宰しています、狩野みきです。

今日は、「子ども」にも critical thinking にも一見、何の関係もなさそうなところから始めさせて下さい。

iPhoneなどで有名なアップルの共同創立者であるSteve Jobs氏が死去したというニュースは、お聞きになった方も多いと思います。Jobs氏といえば、そのカリスマ性(彼のスピーチは私が目指すお手本のひとつですが、「パブリック・スピーキング力」については別途ブログで書きたいと思います)とイノベーション力が語られることが多いですよね。でも私は、それに加えて、Jobsという人は卓越した「自分を信じる力」「自分らしさを追求する力」を持った人だったのではないか、と思っています。

そして、今日は、この「自分らしさ」について書きたいと思います。

「自分の子どもには将来どんな人になってほしいですか」と尋ねられると私は決まって「革命が起きても強くひとりで生きていける人間に」と答えます。日本で革命なんか起きるの?というツッコミが聞こえてきそうですが、えー、つまり、何があっても自分を信じて、自分らしく強く生きていけるような人間になってほしい、ということです。

ところで、「自分らしい」という言葉を子どもに説明するのはけっこう難しいと思います。「他の誰でもない、『あなた』ってことよ」と言ったって、「じゃあ、私って何?」という疑問が浮上するわけで、これは一種の禅問答とも言える、哲学的な問題でもありますよね。

というようなことを考えていたら、「自分の答えのつくりかた」という本に答えのヒントを見つけました。この本は、元マッキンゼーの社員である渡辺健介氏が、問題を解決する際の具体的な手法を、子どもでも理解できるように楽しく、わかりやすく説明したものです。

この本には、自分らしさとは「立場や環境に左右されない価値観」だと書かれています。「特定の環境を前提とした自分」は自分らしさではない、何があってもぶれないのが自分らしさだ、と言うのです。

たとえば、日本の小学校では「明るくて頼りになる人気者」だったAくんが、ドイツの学校に転校したとします。ドイツ語が全然できないAくんはもはや「頼りになる人気者」ではなくなるかもしれません。もしかしたら、言葉もわからず、慣れない環境で友だちもできなかったら、「明るい」という性質すら変わってしまうかもしれません。

Aくんはドイツに行くまでは「明るくて頼りになる人気者気質」が「自分らしさ」だと思っていたかもしれませんが、環境が変わることによって変貌してしまう性質は「自分らしさ」ではないのだ、と渡辺さんの本は教えてくれます(もちろん、Aくんがさらに色々な経験をして、どんな状況でも「明るい」人間になったとしたら、「明るさ」は彼の「自分らしさ」となるわけですが)。そして、色々な環境を経験することが自分らしさを見つけることにつながっていく、ということもこの本は気づかせてくれます。

子どもに色々な環境を経験させてやることの意義は何よりも「見聞を広めること」にあると私は信じていたのですが、見聞を広めることは、自分らしさを見つけることにつながっていくのですね。

自分とは何か。そう簡単に答えが出るとは思いませんが、子どもには色々なこと—楽しいこともたいへんなことも—経験させてやりたいと思います。

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