月別アーカイブ: 2011年12月

子どもたちと本を作っています

こんにちは。「子どものための Critical Thinking Project」を主宰しています、狩野みきです。

私はプライベートで小学低学年の子どもに英語も教えているのですが(子どもたちと街にアルファベットを探しに行った時のエピソードはこちら)、最近、その子どもたちと「世界に1冊しかない本」の作成を始めました。

なぜ本を作ることになったかというと、子どもたちにはなるべく英語を「実践」してほしい、という私のかねてからの願いがあったからです。当初は、本屋さんで適当に本を見つくろってきて、皆で読むことによって「実践」するつもりでいました。

どうせ読むなら子どもたちの好きなジャンルの本にしようと思い、好みを尋ねてみると、1人は「冒険もの」、もう1人は「お姫様もの」との答え。じゃあ「アラジン」にでもしようか、あの話って冒険するお姫様の話だよね、と提案したのですが、反応は今イチ。うーん、困った…と考えあぐねた末、お姫様が冒険するオリジナル・ストーリーを子どもたちと一緒に作ればいいんだ、というところに行き着きました。

毎週、1ページ(内容は、短い英文が2-4文程度)ずつ書き進めているのですが、ちなみに1ページ目は、こんな感じです:

ページ上の英文のほとんどは私が事前に準備し、子どもたちは下線部に英語を書き入れ、余白に絵を描きます。かわいいでしょ。

下線部に書いてある Flower Iris というのは主人公のお姫様の名前なのですが、この名前をはじめ、主人公の外見や性格、他の登場人物や今後の展開などの詳細は、全て子どもたちが相談して決めます。毎回、レッスン中に「次はどんな話にしようか」と相談し、その結果決まった「次ページの内容」を、次のレッスンまでに私が英語にして、プリントアウトしておきます。各ページには必ず空欄があるので、子どもたちは毎回空欄を埋めて絵を描いて、また話の続きを相談して…という繰り返しです。

お話を作ることを通して、英語を書くことに慣れ、発音の理解を深め、文法も少しずつ学んでいければ、と思っています。話の詳細をめぐってはもめることも多いのですが、どうやって折り合いをつけるのか、ということも子どもたちにとっては大事な勉強です。本人たちは何よりも「自分たちだけの本」を作っていることが嬉しいようですが。

いずれお話が完成したら、リボンなどでまとめて製本しようね、と言っています。私自身、小学生の頃はお話を作ることが大好きでした。童心に帰って、どんな話を作ろうか、と誰よりも私自身がワクワクしているのかもしれません。

文科省もクリティカル・シンキングが必要だと言うけれど

こんにちは。「子どものための Critical Thinking Project」を主宰しています、狩野みきです。

クリティカル・シンキングという言葉自体、まだまだ日本では市民権を得ていないようですが、実はこの言葉、文科省が今後の教育に必要なものとして明言していた…ってご存知でしたか。

今年度から小学校で全面実施された「新学習指導要領」ですが、その保護者用パンフレットには、こうあります:

「これからの社会を生きる子どもたちは、自ら課題を発見し解決する力、コミュニケーション能力、物事を多様な観点から考察する力(クリティカル・シンキング)、様々な情報を取捨選択できる力などが求められると考えられます。」

文科省はクリティカル・シンキング(CT)とは「物事を多様な観点から考察する力」と言っていますが、少々言葉が足りないかな、とも思います。CTとは「ことの是非を見きわめ、より良い選択肢を模索する力」なので、上の「自ら課題を発見し解決する力」も「様々な情報を取捨選択できる力」も範疇に入ってきます。また、グループワークを主体とするCTを学べば、コミュニケーション力も身につくと思います。

つまり、CTを学べば、文科省の目指すところの能力がごっそり身につく、というわけですね。

さて、なぜ文科省がこれらの能力に言及しているかというと、新学習指導要領には「生きる力」という一大テーマがあるからです。「詰め込み」「ゆとり」から一新、これからは、激動の社会を生き抜く力を子どもたちに身につけさせよう、という方針のようです。前回このブログにも書いたように、CTは「実生活・実社会を生き抜くためのスキル」ですから、子どもたちにとってCTが必要になる、という文科省の見解は、まったくもって正しいんですね。

しかし、いくら文科省が旗ふりをしても、現実はどうかと言いますと…少なくとも私が見聞きしている限り、公立小学校の現場ではCT(あるいはそれに近いもの)はまだほとんど教えられていないようです。

CTを子どもに教えるということは、「自分の頭で徹底的に考えること」を教えることだと思いますが、これを教えるには、教師側にそれなりのトレーニングが要ります。子どもたちに「考える」喜びを伝えるのが私のライフワークと位置づけていますが、これからは、先生方や保護者の方にも、「考える喜びを教える」喜びを伝えていければ、と思っています。(この辺りの話を、1月のセミナー兼ワークショップにてさせていただく予定です。ご興味のある方は是非お出かけ下さると嬉しいです。)

ちなみに経産省は、これからの社会人には「考え抜く力」「チームで働く力」「前に踏み出す力」が必要だと言っています。学校でCTを学べば、この3つの力の基礎も身につくのになぁ、と思います。

文科省も経産省もきちんとビジョンがある(ように見える)のに、実行が伴わず、学校などとの連携ができ上がっていないことに歯がゆさを感じるのは、私だけでしょうか。