月別アーカイブ: 2011年10月

子どもたちとアルファベットを探しに、街へ

こんにちは。「子どものための Critical Thinking Project」を主宰しています、狩野みきです。

今日のテーマは「子どもの英語学習」です。

大学や critical thinking の授業とは別に、私は週に1回、小学生の子どもたちにプライベートで英語を教えています。子どもって、本当におもしろい発想をしますよね。たとえば、「数字の8を書くのを途中でやめちゃえばSになるんだ」とか「小文字のTって十字架みたいだね」とか。長年英語を教えて頭がガチガチになっている私にはとうてい思いつかないことばかりです。そして、これが、私自身の視点を増やすためのトレーニングにもなっています。

先日、AからZまでの基本的な発音のからくり(フォニックス)を子どもたちがマスターしたのを記念して、子どもたちと「アルファベット探検」をしに街に繰り出しました。東京の街はアルファベットだらけです。「お店や看板に書いてあるアルファベットを探し出して、それを発音する」というのがアルファベット探検の趣旨だったのですが、要するに、今までは「机上」のものにすぎなかった発音のからくりを「現実世界のもの」として子どもたちと一緒に体験してみたかったのです。

街、と言っても、我が家からスタートして、近所のアイスクリーム屋さんまでのわずかな距離です(アイスクリーム屋さんでアイスを食べると探検は終了、という行程でした)。しかし、大人の足なら5分で着いてしまう道のりも、子どもたちとアルファベットを探しながら歩いてみると実に30分以上もかかりました。

I found one!(見つけた!)と言って子どもたちが嬉しそうに看板に書いてある英語を指さして、頭をフル回転させてその発音を考えている様子は、感動的なものがありました。saveという単語を見つけて、「sはスでしょ、最後にeがあるから、aはアじゃなくて、音が変わるんだよね…あれ?エって読むんだっけ、イだっけ?」などと子ども同士で相談している姿も本当に頼もしく、愛らしいです。

とにかくいっぱいアルファベットを探して、いっぱい読んで、子どもたちが自信をつけて、もっと英語を知りたいと思ってくれるようになる!というのが私の当初のシナリオだったのですが…

我が家を出てすぐ、シナリオ通りにはいかないことに気づきました。まず、慣れ親しんでいる「フォント」と違うフォントは読みづらい、ということがわかりました。今までの教科書と違う字体だったり、かなり装飾めいた筆記体だと読めなくなってしまうのですね。さらには、ou/ch/th/aiなどの「上級編」発音はまだ教えていなかったのですが、巷にはearth/house/churchなどの言葉やbeautyに見られるような不規則発音があふれている、ということも気づきました。

というわけで、先週から、上級編発音を勉強し始めました。子どもたちも A – Z の基本発音だけでは現実世界では歯が立たない、ということを実感したようで、「もっと勉強しないと色々読めるようにならないもんね」と言ってがんばっています。一緒にがんばろうね。

それにしても。世の中は、机上の考え通りにはいかないものですね。

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「自分らしさ」って何?

こんにちは。「子どものための Critical Thinking Project」を主宰しています、狩野みきです。

今日は、「子ども」にも critical thinking にも一見、何の関係もなさそうなところから始めさせて下さい。

iPhoneなどで有名なアップルの共同創立者であるSteve Jobs氏が死去したというニュースは、お聞きになった方も多いと思います。Jobs氏といえば、そのカリスマ性(彼のスピーチは私が目指すお手本のひとつですが、「パブリック・スピーキング力」については別途ブログで書きたいと思います)とイノベーション力が語られることが多いですよね。でも私は、それに加えて、Jobsという人は卓越した「自分を信じる力」「自分らしさを追求する力」を持った人だったのではないか、と思っています。

そして、今日は、この「自分らしさ」について書きたいと思います。

「自分の子どもには将来どんな人になってほしいですか」と尋ねられると私は決まって「革命が起きても強くひとりで生きていける人間に」と答えます。日本で革命なんか起きるの?というツッコミが聞こえてきそうですが、えー、つまり、何があっても自分を信じて、自分らしく強く生きていけるような人間になってほしい、ということです。

ところで、「自分らしい」という言葉を子どもに説明するのはけっこう難しいと思います。「他の誰でもない、『あなた』ってことよ」と言ったって、「じゃあ、私って何?」という疑問が浮上するわけで、これは一種の禅問答とも言える、哲学的な問題でもありますよね。

というようなことを考えていたら、「自分の答えのつくりかた」という本に答えのヒントを見つけました。この本は、元マッキンゼーの社員である渡辺健介氏が、問題を解決する際の具体的な手法を、子どもでも理解できるように楽しく、わかりやすく説明したものです。

この本には、自分らしさとは「立場や環境に左右されない価値観」だと書かれています。「特定の環境を前提とした自分」は自分らしさではない、何があってもぶれないのが自分らしさだ、と言うのです。

たとえば、日本の小学校では「明るくて頼りになる人気者」だったAくんが、ドイツの学校に転校したとします。ドイツ語が全然できないAくんはもはや「頼りになる人気者」ではなくなるかもしれません。もしかしたら、言葉もわからず、慣れない環境で友だちもできなかったら、「明るい」という性質すら変わってしまうかもしれません。

Aくんはドイツに行くまでは「明るくて頼りになる人気者気質」が「自分らしさ」だと思っていたかもしれませんが、環境が変わることによって変貌してしまう性質は「自分らしさ」ではないのだ、と渡辺さんの本は教えてくれます(もちろん、Aくんがさらに色々な経験をして、どんな状況でも「明るい」人間になったとしたら、「明るさ」は彼の「自分らしさ」となるわけですが)。そして、色々な環境を経験することが自分らしさを見つけることにつながっていく、ということもこの本は気づかせてくれます。

子どもに色々な環境を経験させてやることの意義は何よりも「見聞を広めること」にあると私は信じていたのですが、見聞を広めることは、自分らしさを見つけることにつながっていくのですね。

自分とは何か。そう簡単に答えが出るとは思いませんが、子どもには色々なこと—楽しいこともたいへんなことも—経験させてやりたいと思います。

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