月別アーカイブ: 2011年9月

親子で楽しみたい、my (our) 単語帳

こんにちは。「子どものためのCritical Thinking Project」を主宰しています、狩野みきです。

今でこそ大学で英語を教えたり、英語に関する本なども書かせていただいている私ですが、学生時代の英語のボキャブラリー力と来たら、それはそれはお粗末なものでした。ある時「こんなお粗末な単語量じゃ何も伝えられない」と危機感を抱き、一心発起して自分だけの単語帳を作ろうと決めました。そして、テレビや新聞などで自分の知らない単語が出てくると手当り次第にノートに書きとめては覚える…ということを10年ほどストイックに続けました(この辺りのことは、拙著「女性の英会話 完全自習ブック」に詳しく書いてあります)。そうして今では英語で講義を行うほどに成長(?)したのですが、この「my 単語帳」、ちょっとだけカスタマイズすると「親子の our 単語帳」にできるんですよ。

そこで「親子の our 単語帳」の作り方です。

  1. まず、空の靴箱(あるいはそれに準ずるもの)を3つ用意する(箱を活用するという方法は、TOEICの専門家であるロバート・ヒルキさんに以前教わったものです)。
  2. ハガキ大ぐらいのカード(なければ普通の紙でいいです)を何枚か用意する。
  3. このカード1枚につき、覚えたい単語を1つ、表面に書きます(ある程度ABCを書けるようになっているお子さんなら、自分でカードに書けますが、まだ読み書きが完全でない場合は、お母さんやお父さんが単語を書いてあげてください)。
  4. 裏面は何を書くかと言うと…その単語の意味ではなく、その単語にまつわる「思い」や「連想すること」を書きます。たとえば、artという言葉を新しく覚えたいのなら、artと書いた面の裏には、「いちばん好きな授業」「○○ちゃんと一緒にお絵描きして楽しかった」などと書いておくのです。
  5. 用意した3つの靴箱にそれぞれ、new(新しく出会った単語)、almost(もうちょっとで覚えられそう)、perfect(完璧に覚えられた!)などの文字を書き、新しく出会った単語(たとえばart)の紙は new の箱に入れておきます。

newの箱にそこそこの枚数の紙がたまってきたら、その中から何枚か適当に出してきて、子どもにたとえば「artってどういう意味だったっけ?」ときいてみます。すぐさま「図工!」などと答えてきたら、このartの紙は perfect の箱に移動します。しばらく考えて答えられたら almost の箱に入れ、まるで思い出せなかったら、再び new の箱に戻します。

裏面に単語の意味(artの場合なら「図工」)を書かない、というのが実はミソです(お子さんの単語量が飛躍的にアップして、親が知らない単語をカードに書くようになったら、どこかに親用の「解答集」をまとめておく必要があります)。裏面は、子どもが「うーん、artって何だっけ、何だっけ…」と悩んだときのヒント集として使い、「ほら、○○ちゃんと一緒に絵を描いて楽しかったって書いてあるよ」または「いちばん好きな授業よね」とヒントを親が投げてあげるのです。

ヒントを与えてクイズのように子どもとやりとりすると、けっこう楽しいですよ。子どもも必死になって答えてきます。さらに、artという紙を作ってから日数が経っていますから、もしかすると、いちばん好きな授業はすでにartではなく、musicに変わっている可能性もあります。そうすると「え?音楽が今はいちばん好きなの?」「うん」「どうして?」という具合に、英語の勉強というところから発展して、親子で対話ができる、という仕組みです。

almost や prefectのに入れた紙も、時々引っぱりだして「この単語、どういう意味?」と聞いてあげる必要があります。覚えたと思った単語でも、悲しいかな、しばらくすると忘れてしまうこともあります(特に子どもは大人に比べると覚えるのも早い分、忘れるのも早いようです)。ですから、時々はperfectの箱から何枚か出して子どもに意味を尋ね、忘れているようだったら new や almost の箱に入れ直し、almost の箱からも時々は紙を出してきて、完璧に覚えているようならperfectの箱に入れる…という作業をくり返して、単語を定着させてあげるのです。

気が遠くなるような話…と思われる方、でも、是非試してみて下さい。単語も確実に身につきますし、子どもと英語を介して話をすることによって、色々な発見がありますよ。

「ちいさな哲学者たち」

こんにちは、「子どものためのCritical Thinking Project」を主宰しています、狩野みきです。

友人がこのサイトを見て思い出した、と言って「ちいさな哲学者たち」というフランスのドキュメンタリー映画を紹介してくれました。早速見に行こう!と勇んだのはいいのですが、東京では上映がなんと9日まで…時間がなく、行けそうもありません…泣く泣く、予告編をYouTubeで見たりレビューを読むだけで、とりあえず見たいという欲求を落ち着かせることにしました(普段から色々な方面にアンテナを立てておくことの重要性をあらためて感じました)。

「ちいさな哲学者たち」は、フランスのとある幼稚園で行われた、とある試みを映像化した作品です。その試みとは、2年間にわたって幼稚園生に哲学を教える、というものです。「愛とは?」「自由とは?」「子どもの役割って?」という問いかけを幼稚園生が考えます。なんとも意欲的な試みですよね。

予告編しか見られないのが本当に残念ですが、予告編を見るだけでも、子どもたちの会話にハッとさせられること、しきりです。子どもたちが「友だち」を定義して「友だちは一緒に遊ぶもの、恋人はキスするの」と言ったり「結婚はよくない」と言ったり。子どもたちなりに議論になり、「彼の話を聞けよ」といましめる子どもや、口論になって友だちをたたいてしまう子どもも出てきます。たたいてしまった子どもに、先生が「たたけば解決するの?まず話すの」と諭すシーンも「言葉でわかりあう型」の西洋ならでは、と考えさせられます。

「子どものためのCritical Thinking Project」でも、こんな、一見難しいけれどとても大事な問題を子どもたちと一緒に考えていければ、と思っています。「生きるってどういうこと?」「豊かさって?」「なぜけんかをするの?」What does it mean to live? What is richness? Why do we fight?

時間をかけて一緒に考えていけば、子どもたちなりの答えや発見がきっと見つかるはずです。その答えに我々大人も何か大事なことを教わるのだろうと思います。そして、子どもたちの答えや発見の先には、もっと広くてワクワクする世界が待っていると思うのです。

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