ちょっと、英語の話:仮定法について

Wonderful☆Kidsは、子どもたちの考える力を伸ばし、「生きる力」を伸ばすスクールです!

お知らせ
先日、TEDxTeachersにて、狩野が Wonderful☆Kids についてプレゼンテーションを行ないました。その時の動画はこちらです。
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こんにちは。Wonderful☆Kids の狩野みきです。

私がそもそも子どもたちに「考える力」を教えるに至ったのは、20年にわたって大学で英語を教えてきたからなのですが(このことについては「狩野みきからご挨拶」というページに詳しく書かせていただいています)、今日は、その、英語の話です。

先日、道を歩いていたら、都内某有名私立高校の男子生徒が「仮定法が、仮定法が」と大騒ぎしながら歩いていました。

仮定法には様々な分類の仕方があるのですが、高校生などが苦手意識を抱いている「仮定法」とは主に「もし○○だったら△△なのに」に代表されるような、現実と異なる内容を表現するもののようです。

日本の英語の教科書によく登場する仮定法の例文と言えば、If I were a bird, I would fly.(もしも鳥だったら、飛ぶのに)If I were rich, I would buy a house.(もしもお金持ちだったら、家を買うのに)のように、妄想(?)に走っているイメージのものも少なくありません。

実は、仮定法は日常生活では欠かせないツール。仮定法はコミュニケーションを円滑にし、願望や後悔、ちょっとした心の機微の表現にも深みを持たせてくれます。

もっと実生活を見込んだ英語を学校が教えてくれれば、高校生も仮定法を身近に感じるはずだし、勉強する気も起きるのになぁ…(これも仮定法ですね)と思い、ツイッターでそうつぶやいたところ「是非、仮定法のおもしろいテキストを書いて下さい」とリクエストくださった方がありました(ありがとうございます!)。

そこで、テキストとまでは行きませんが、「実生活を見込んだ」仮定法をふんだんに盛り込んだ会話例を作ってみました。解説は、あの、日向清人先生がつけて下さっています!

日向先生は、「知られざる英会話のスキル20」や「知られざる基本英単語のルール」などでも、私が書いた英文にすばらしい解説を書いていらっしゃいますが、今回の解説も、英語学習者のツボを心得た、名文です。

それでは、以下に、お送りします。
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A(Ken、兄): 1) If I were you, I wouldn’t have dated that idiot in the first place. I warned you about him.(僕だったら、あんなバカとそもそもつき合ったりしなかったね。あいつには注意しろって言っただろ)

B(Jane、妹):2) If I had a nice little sister like me, I wouldn’t say such a horrible thing to her.(もしも私みたいなかわいい妹がいたら、私は自分の妹にそんなひどいこと言わないわね)

A: You’d better show your respect to your big brother.(お兄ちゃんには敬意を払った方がいいぞ)

B: You want me to say, “Ken, 3) I’d appreciate it if you gave me advice on my relationship,” huh? I wouldn’t say that. Your advice is the last thing I’d need.(「ケン、私のおつき合いについて助言をいただけるとありがたいんだけど」って私に言えってこと?そんなこと、言うわけないでしょ。お兄ちゃんのアドバイスなんて、絶対に要らないもんね)

A: Come on, Jane … he’s not worth your tears … I want you to know that. I just thought … 4) you might feel better if you really knew that.(ねえ、ジェーン…あいつのために泣くなんて、もったいないよ…それをわかってほしいんだ。僕はさ、ただ…あいつのために泣くのが無意味だって本当にわかったら、気分もましになるんじゃないかって思っただけなんだよ)

B: …

A: Why don’t we go for a walk? 5) It’d be nice out there. Or shall we go to the beach?(散歩に行かない?外に出たら気持ちいいぞ。それとも、ビーチに行こうか?)

B: 6) That’d be nice … but not today.(いいわね…でも、今日はやめとく)

A: OK …(わかった…)

B: Ken … I’m sorry. 7) I really shouldn’t have dated him. 8) If only I had listened to you, everything would have been all right.(ケン…ごめんなさい。本当に、彼とつき合うべきじゃなかったのよね。お兄ちゃんの言うことを聞いてさえいたら、全てはうまく行っていたはずなのに)

【解説】

1) If I were you, I wouldn’t have dated that idiot in the first place.

☞ 普通に英語を使う人々にとっては、Ifで始まって、次に were と来たらすぐ「あっ、何か仮定するんだ」とわかるしかけになっています。そして、続いて would が出て来ると、「ああ、さっきの仮定に立った上での話ね」と気づきます。

 基本的に If節の中の動詞が過去形で、本体部分に当たる主節の中の動詞が wouldと組み合わさっているときは、(あとで出て来る、基準時が過去である過去完了を使うタイプと対照的に)現在を基準時に、「こうだったらいいのに」といったことを言うときに使います。上の文では、現時点を基準に、自分だったらそもそもあんなバカとデートなんかしなかった」というふうに、実際にはデートをしたという事実につき、「デートすべきではなかった」という、過去に対する否定的評価を加える格好になっています。

 なお、現在を基準時に仮定をするときは、If節の中の動詞は過去形にするというのがルールですから、If I was you と言ってもよさそうで、実際、ネイティブでもこういう言い方をする人がいますが、be動詞を使って「現実と異なっており、話し手の頭の中にしかない状況」を言うときは、 be動詞の「仮定モード(subjunctive)」である were を使うべしというルールがある関係で、If I was youではなく、If I were youという言い方がより一般的であり、また、一種の定型句となっています。

2) If I had a nice little sister like me, I wouldn’t say such a horrible thing to her.

☞ Ifに続いて had というhaveの過去形を耳にした瞬間、聞き手は、「あっ、現在の事実とは異なる仮定を立てるんだ」とすぐわかります。次いで、I wouldn’t say と、would +不定詞のパターンが来るので、さっきの仮定に立って、「こうだったら、こうはしない」ということを言っているのだとわかります。

3) I’d appreciate it if you gave me advice on my relationship,

☞ I’d appreciateという、would+不定詞が入った言い方を聞くや、聞き手は、すぐ「何か仮定が続くんだろうな」と気づきます。そして、if you gave me advice on my relationshipで、やっぱりね、「わたしたちの関係についてアドバイスしてくれたら」と来ましたねと受け止めます。ちなみに、こういった状況でgaveと過去形を使うと、you may or may not giveと響きます。つまり、アドバイスしてくれるかどうかの確率は半々だろうけれど、よかったら助言してよという感じになり、間接的な響きがする分、ていねいな言い方となります。現に、I’d appreciate it if …という表現は、ていねいにものを頼む際の定型表現のひとつです。

4) you might feel better if you really knew that

☞ これも you might feel better と来たところで、何か仮定が来るなと感じます。というのは、If節と組み合せる本体部分の助動詞は必ずしもwouldだけではなく、should 他の助動詞も使われるからです。つまり、If you really knew that, you would feel better.という言い方は、「本当にそれを知っていたら、おそらく気分がましになるはずだ」と、けっこう公算が高い感じがします。ところが、you should/could/might feel betterと助動詞を変えていくと、順に弱くなっていき、If you really knew that, you might feel better.は、「本当にそれを知っていたら、ちょっと気分もいいなかという気がして」的な控えめな言い方と響きます。

5) It’d be nice out there.  6) That’d be nice

☞ここのIt’d be niceとThat’d be niceは、それぞれ、It would be nice out there (if we went for a walk). であり、(If we went to the beach…yes,) that would be nice. ということなので、「もし、〜なら」という形での一定状況の想定/仮定が認められます。こういうときは、Ifが実際には明示されていなくても、wouldを使います。Bさんの2つ目のセリフにあるI wouldn’t say that.も同じようにIfの内容(「もし頼まれても」)が省略されていると感じられ、日常会話では、このようにIfが省略された「隠れ仮定法」が実によく登場します。

7) I really shouldn’t have dated him.

☞shouldn’t have は言外に、provided that you had been in your right mind, of course(もちろん、冷静さを失なわずにいたら)といった前提が見え隠れするので、仮定法的に解釈することもできるかと思います。

8) If only I had listened to you, everything would have been all right.

☞ If only で仮定だとわかり、hadと動詞listenのED形(いわゆる過去分詞)が出て来るや、実際は listen to you つまり相手の忠告に耳を貸さなかったんだとわかります。そして、would have been というwould have + 動詞が聞こえてくる段で、(実際には耳を貸さなかったけれど)仮に相手の忠告に耳をかしていたら、すべてうまく行っていたはずだのにと嘆いているんだと気づくしかけです。
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