日本の子どもたちに critical thinking を教える理由

<お知らせ>

小学生対象の土曜クラス、始まりました!詳しくは、こちらをクリック。

ワークショップ「女性のためのクリティカル・シンキング」(2月4日)

☆    ☆    ☆    ☆    ☆    ☆    ☆

こんにちは。「子どものための Critical Thinking Project」を主宰しています、狩野みきです。

先日、東京都中野区にある「夢のアフタースクール」新渡戸文化アフタースクールにて、小学生対象の critical thinking(以下、CT)のレッスンをしてきました。

集まってくれたのは CT は初めて、という2年生と3年生の男の子たち。元気いっぱい、一生懸命考える姿は本当にかわいらしく、また頼もしくもありました。(レッスンの様子は、アフタースクールのこちらのサイトに詳しく書かれています。)

私は子ども相手に CT レッスンを始める前には必ず「これからやることは学校の勉強とは違って、正解は一つとは限らないの。だから、間違えてたらどうしよう、なんて考えないでね」としつこく言います。

なぜかと言うと、以前このブログでも書きましたが、日本の子どもたちは、正解をはじき出すことを第一に考える、いわゆる「正解主義」の影響が決して小さくないように思えるからです。

私がしつこく言ったせいもあり、男の子たちは自分たちだけの「答え」を出そうと皆一生懸命がんばってくれました。一方で、誰かが他の子どもの発言に対して「正解!」とか「ピンポーン!」と言うと、言われた子どもがホッとした表情を見せることも…「正解」という響きが、子どもたちにとってどれだけの「価値」があるのか、あらためて考えさせられました。

なぜ日本の子どもたちに CT を教える必要があるのですか、とよく聞かれます。理由はたくさんあります。でも、いちばんの理由は「正解は一つじゃなくたっていい」ということを体感してもらいたいから、ということです。

1+1を「3」と答えるのは困ります。でも、いわゆる「勉強」の中には、多様な意見を許容すべき領域がもっとあるはずだと思うのです。正解はしばし置いておいて、もっと子ども一人一人の意見を大事にしてやる場があってもいいと思うのです。そもそも、世の中は正解がいっぱいだし、正解がないことだってあるんですものね。

以前、小学2年生の子どもたちに「ピラミッドってどうやって作ったんだと思う?」と尋ねたところ、「石を抱えた人が、跳び箱の時に使うようなジャンプ台に乗ってピラミッドの上の方まで飛ばしてもらった」「ラクダを交互に重ねていって、ハシゴ代わりにした」などの答えが返ってきました。

「正解」はもちろん違います(今までの研究によると、違うということになっているようです)。それでも、いいんです。自分が持っている知識(例えば、ちょっとした力学的、歴史的知識)や連想(例えば、跳び箱の授業)を総動員して、あれこれ考えてみる。友だちの意見を聞いて、別の考え方を肌で感じる。正解なんて関係ないや、と思える場がある。色々な「正解」があるんだな、と理解することが、他者理解を生むとも思うのです。

「考えるって楽しいね」と子どもが感じ、さらには、ピラミッドは実際どうやって作ったのかな、調べてみよう、と好奇心の新しい扉をひとつ開けてくれれば、本当に嬉しいです。

アフタースクールで出会った男の子たちは、どう感じてくれたでしょうか。