「コミュニケーション」の実体って何?

<ワークショップ情報>

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こんにちは。「子どものための Critical Thinking Project」を主宰しています、狩野みきです。

「コミュニケーション能力」は現代を語るキーワードのひとつですが、果たしてコミュニケーションの実体は何?と問われると答えにつまる人は多いのではないでしょうか。

というわけで、今回は「コミュニケーションってそもそも何?」という話です。

学習英英辞典の権威、Longman Dictionary of Contemporary English によると、communication の定義は “the process by which people exchange information or express their thoughts and feelings”(人々が情報を交換したり考えや気持ちを表現するプロセス)とあります。

一方で、大辞泉のコミュニケーションの定義は「社会生活を営む人間が互いに意思や感情、思考を伝達し合うこと」。

つまり、コミュニケーションは複数の人間を想定していることがわかります。そんなの当たり前でしょ、とツッコミが聞こえてきそうですが、実際はどうかと言うと、「コミュニケーションは相手があって初めて成立する」という大事な点がけっこう見過ごされているように思えてならないのです。

先日、学生たちに「コミュニケーションって何?」と尋ねたところ、「自分の意見を明確に言えること」「外国語が堪能なこと」という答えが圧倒的多数でした。一方的に何かを表現できる力、というイメージが強いんですね。

話は少々それますが、巷に出回っている英会話のテキストには、会話の流れを一方的に決めているものが多いように思います。相手はこう言ってくるはずだから、そうしたらこう返しましょう、という展開なのですが、相手が「こう言ってくるはず」と決めつけること自体、コミュニケーションを冒涜(?)している気がします(当事者同士が一緒にコミュニケーションを作り上げていくことが英会話では特に大事、という話は、日向清人さんとの共著「知られざる英会話のスキル20」の一貫したテーマです)。

コミュニケーションとは何か。私の「定義」は「お互いを尊重し合って対話した上で、お互いの意見をさらに深め合うこと」です。そして、そんなコミュニケーションをはかれる子どもたちを、これから育てていきたいと思っています。題して、「コミュニケーション能力プログラム」。IWCJ(私が critical thinking のレッスンを提供している財団法人)と一緒に開発したばかりの、ホヤホヤのプログラムです。

子どもたちに学んでもらうのは、①自分の考えを持った上で相手の意見をきちんと聞ける力、②相手の考えをさらに良い方向に深め、それを引き出してあげる力、の2つです。

「相手の意見をさらに深める」という作業は、私が長年、大学で学生相手にしてきたことです。蓄積したノウハウを、今度は子どもたちに伝授していきたいと思っています。相手の意見を深めるためには自分も一生懸命考えないといけないので、この作業は回りまわって自分の意見を深めることにもなるんですよ。

自分の意見をしっかりと持ってはいるけれどそれを押し付けず、きちんと対話して、互いに高めていく。これは、多種多様な人たちとつき合うグローバル社会における、理想の必須の力ではないか、と思っています。