子どもの無理難題を「考える時間」に変える

こんにちは。「子どものための Critical Thinking Project」を主宰しています、狩野みきです。

子どもって時々、とんでもない無理難題をさらっと言ってきますよね。子どもの「無理難題」にはおおよそ二種類あって、ひとつは「○○のオモチャが欲しい」などの要求で、かなえてあげようと思えばできるけれど、教育上その他の理由で保護者が「ダメ」と言えるタイプのもの。もう一方は、「月に行きたい」的な要求で、その要求をかなえること自体がそもそも難しそうなもの、です。

この2つ目のタイプの無理難題、実は、「考える」ための格好の材料になるんです。実現不可能(そう)な物事をどうしたら実現可能にできるか、子どもと一緒にいわばおままごと感覚で考えてみるのですが、これは考えること自体の訓練にもなりますし、色々夢がふくらんで楽しいと思います。「無理、無理」とあっさり却下せずに一緒に策を考えてあげると、子どもも最終的には納得してくれる…こともあるようです。

また私事で恐縮ですが、うちの娘(小学低学年)が先日、普段かわいがっているスターバックスのクマの、ひとまわり大きなサイズのものが欲しい、と言い出しました。

日本のスターバックスでは、クリスマスや桜の時期になると毎年違うデザインのクマが売り出されるのですが、このクマ(「ベアリスタ」という名前だそうです)、体のサイズがいずれも体長20センチぐらいと決まっています。

大きめサイズのベアリスタは売っていない由、娘には告げたのですが、それでも本人は納得しません。そこで、どうしたらひとまわり大きなベアリスタを入手できるか、二人で考えてみることにしました。

以下、「無理難題」を「考える時間」に変えるための、手順です:

  1. まず、「ゴール」を明確にします。要するに、子どもが言いだした「無理難題」の目指すところ、ですね。私と娘の場合、「ゴール」は「ひとまわり大きなベアリスタを入手する」です。
  2. その「ゴール」を達成するための「策」を、なるべくたくさん、多方面から考えつく限り出し合います(紙に書き出すのもOK)。策を出し合っている時に注意すべきは、どんな策でもとりあえず口に出してみる、ということです。「こんな考えは非現実的なのではないか」「こんなことを口にしたらバカだと思われるのではないか」などとへんに「大人の」分別を持ち出してしまうと、せっかくの大胆な発想も芽を摘まれかねないからです。
  3. リストアップした策の中から、いちばん現実的なもの、そして、当事者(今回の場合は私と娘)にとっていちばんしっくりと来るものを選びます。
    (注:ちなみに、このプロセスは、critical thinking のクラスで「より良い選択肢を模索する」ためのトレーニングとしても時々行なうものです)

私と娘が出した策は、①「アメリカのスターバックスにメールを出して、大きめのサイズのベアリスタを作ってくれないかどうか、聞いてみる」②「ぬいぐるみを作る天才をどこかから見つけ出して、その人に作ってもらう」③「自分でがんばってお裁縫の腕を磨き、いずれ自分で作る」、の3つでした。

①案に対しては「そんなことしたら、大騒ぎになるからやめて」と娘。「アメリカは『とりあえず聞いてみることが大事』な国だから、そんなこと気にしなくていいのよ、私、メールいくらでも出しちゃう」と諭しましたが、それでもこの案は、(思慮深い)娘の一存で却下。②も探せるかどうかわからないし、探せたとしても、その人が思い通りのクマを作ってくれるかどうかわからない、という(娘の)理由で却下。結局、③案を採択することになりました。

さて、この話をしてから、はや2週間。娘はお裁縫を習いたい、とは未だに言ってきません。習いたい、と言われても、私には教えられないのですけれど。

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