月別アーカイブ: 2011年9月

親子で楽しみたい!? critical thinking

こんにちは、「子どものための Critical Thinking Project」を主宰しています、狩野みきです。

今日のテーマは、critical thinking の基本である「ひとつの現象に対して色々な原因を考える」ということ。A という現象があったとして、「その原因としてB が考えられる」と誰かが言った場合、「本当にA の原因はB なのか?」「B以外の原因は考えられないのか?」ということを(場合によっては)考える必要がある、という話です(相手の意見を疑ってかかることを推奨しているわけではありません…念のため)。

AだのBだの、現象だの原因だの、難しそうに書いてしまいましたが、実は「色々な原因を考える」という作業は、私たちが無意識のうちにしていることなんです。

たとえば、「いつもバナナを買っているけれど、今回買ったバナナだけが早く黒くなってしまった」という「現象」があったとします(つい最近私の家でありました)。バナナが早く黒くなるのがイヤであれば(=私)、なぜ黒くなったのかという原因をつきとめて、その原因がなくなるようにすればいいわけです。しかし、頭に最初にうかんだ「安売りのバナナを買ったから」という原因に飛びついて「安売りのバナナを買うのはよそう」と結論づけてしまうのは critical thinking に反します。

もちろん、原因がわかりきっている場合は別ですが、私たちの生活では、原因を簡単に突き止められないことの方が多いかもしれません。バナナの例に戻りますと、まず、目の前にある現象(黒いバナナ)を引き起こしうる、色々な原因を考える必要があります。たとえば、「今回だけいつもと違うスーパーで買ったから」「最近部屋の中がひときわ暑いから」「秋になって日差しの向きが変わって、気がついたらバナナが直射日光を浴びていた」などなど。その原因をすべて検討していちばんもっともらしい原因をつきとめたら、その原因である行為(たとえば、「直射日光」)を避けるようにすればいいのです。

色々な理由を考えることは、想像力のトレーニングにもなります。お子さんと一緒に、テレビを見ながらでもできますよ。初めて見るドラマやアニメはかっこうの題材です。主人公が「なぜあんなに明るい性格なのか」「なぜあんなに派手な服装なのか」など、その背景をあれこれ推理するのです。与えられた情報(映像)をもとに推理するので、ちょっとした探偵ごっこですね。

子どもを叱る前に critical thinking してみるのもちょっとしたトレーニングです。子どもが何かしでかした時、「原因はこれだ」と疑ってかかってしまって…というのは私だけ?かもしれませんが…

たとえば、「子どもが(また)部屋の片づけをしない」という現象があったとします。その原因は色々考えられますよね。「またさぼっている」「どうしても片付けたくない理由がある(たとえば作業中のジグゾーパズルをそのままにしておきたい)」「体の具合が悪い」「片付けるのが不得意」「親への何らかのメッセージがこめられている(どんな?)」「偶然」などなど。こう考えている間に、頭ごなしに「また部屋をきたないままにして!」と怒る気力が萎えていく…と思うのですが、私自身、我が子を叱るという場面ではまだまだ critical thinking を実行に移せないままでいます(反省)。

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塩野七生さんが説く「これからの日本人に必要なもの」

こんにちは。「子どものためのCritical Thinking Project」を主宰しています、狩野みきです。

塩野七生さんの「生き方の演習 若者たちへ」という本、ご存知ですか。

知人に紹介されて読んでみたのですが、この本は「これからの日本人に必要なものは何なのか」という問題を作家の塩野さんがとてもわかりやすい語り口で教えてくれる、名作です。ご自身の子育て論も登場するので、小さい子どもを持つ親御さん必読の書でもありますが、日本の社会や教育のあり方、国際化など、とにかく色々なことを考えさせられる本だと思います(英語で言うところの food for thought ですね)。

以下に、内容を簡単にご紹介したいと思います:

  • まず、いちばん大事なのは「現実を見極める」こと。「言われたことをそのまま、丸ごと信じていたのでは、あなた方には現実がわからないことになる危険大」
  • 国や年齢を超えて理解し合いたいのなら、論理的に話さなければダメ
  • 日本人は「選択肢をひとつしかもたない」ことが多い。ものごとを決める時にはもっと多くの選択肢を検討しなければいけない
  • 外国語を話す上で大事なのは、「語学の巧みさではなく伝える内容」
  • 子どもを育てる上で大事なのは、①母国語をきちんと使えるようにすること(頭で考える時も使うのは母国語だから) ②外国語の知識をつけさせてやること(国際化社会では、知っていた方がよい) ③自分の頭で考えられるようにすること

現実を見極め、論理的に話し、多くの選択肢を検討し、自分の頭で考える—これは、まさに critical thinking です。普段から自分の頭で考えていれば、「伝える内容」も深みが出てきますよね。

日本の子どもたちが大人になった時、どんな「内容」を伝えてくれるのか。Critical Thinking Project はその内容を深めるお手伝いをしたいと思っています。

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