こんにちは。「子どものための Critical Thinking Project」を主宰しています、狩野みきです。
ひとつ前の記事「英会話のルール:結論は先、背景は後」にはたくさんの反響をいただきました。どうもありがとうございます。皆さまのコメントはブログを続けていく上での大きな励みでもあり、また、貴重な刺激でもあります。これからもどうぞよろしくお願いいたします。
<結論→背景>という順序で話をすると、話の先が見えやすくなる、という話を前回の記事で書きました。結論を先に言うことによって「この話はどこに行き着くのか」という不要なストレスを相手に与えない、ということですね(あくまでも英語文化における話ですが)。
英語には、話の先を見えやすくしてあげる表現がたくさんあります。that reminds me (それで思い出したけど)、sorry to change the subject(話題を変えて悪いんだけど)before I forget(忘れる前に言っておくね)などの前置き表現、そして、I have three points to make.(要点は3つあります)といった予告的な表現など。このような表現を聞けば、「ああ、これからこの人は○○な話をするのか」という具合に、相手は話の方向性が見えるわけです。ちなみに、日本語にも同様の表現はありますが、英語ほどは頻繁に使われていないように思います(この辺りにも、「あ・うん型」と「言葉でわかり合う型」のコミュニケーション・スタイルの違いを感じます)。
相手のストレスをなるべく減らすように話す、ということをつきつめていくと、私はいつも「はたして本題にすぐ入ることが相手のストレス軽減につながるのか」ということを考えます。相手の時間を無駄に使わない=相手にストレスを与えない、という前提のもとに、いきなりすぱっと本題に入るべきかどうか。ケースバイケースと言ってしまえばそれまでですが、悩むところです(ちなみにケースバイケースという言葉は和製英語ではなく、れっきとした英語です)。
結論を先に言うことを好む英語文化でも、この点については意見が分かれるようです。アメリカにおける職場のコミュニケーション・スタイルをリサーチした社会言語学の研究結果によると、男性はさっさと本題に入ってもらうことを好む人が多く、女性はすぐに本題に入らない方が居心地がよいと思う人が多いそうです。だからといって、男性のペースに合わせようとして(あるいはその他の理由で)女性がすぱっと本題に入ると「あの人は女性らしくない」と陰口(?)をたたかれることもあるというのですから、アメリカ人もたいへんです。
相手にストレスを与えない話し方とはすなわち、相手がスルッと理解できるような話し方だと思います。相手にスルッと理解してもらうためには、相手の立場を十分に考える必要があります(ある程度想像力の勝負なので限界はあると思いますが)。実はこの、相手の立場を十分に考える、というのは critical thinking と密接につながっていくんです。どうつながっているか…は、また別の機会に書きたいと思います。