視点を多くすること=解決策への近道?

こんにちは。「子どものための Critical Thinking Project」を主宰しています、狩野みきです。

今日は娘を連れて、TEDxTokyo(米カリフォルニアに本拠地を置く TED の東京支部)主催による、「子どもと未来を考える」というイベントに参加してきました。「これから、子どもたちには何を与えていくべきなのか」ということをテーマに、教育やアート、ビジネスの第一線で活躍するスピーカーたちが色々な意見を披露したのですが、その中でも特に、文化人類学者の竹村真一氏の話は「視点を変えることの重要性」を再認識するという意味においても非常に刺激的なものでした。

竹村さんは、人間が使っている言葉がいかにすばらしいものか、人間が住んでいる地球がどれだけありがたい星なのか、ということを話していらしたのですが、その説明のし方が、とてもお上手なんですね。(以下、なるべく忠実に再現したつもりです)

「ネコから見たらね、言葉って、テレパシーみたいなものなんだよ。だって、空気を口から吐き出す時に音の出し方なんかをちょこちょこっと工夫するだけで、相手に気持ちが通じちゃうんだから。」

「宇宙から見るとね、地球は青いんだ、青いってことは水がいっぱいあるっていうことで、これは、他の星から見れば、本当に、すばらしい、ありがたいことなんだよ。」

どちらも、いつもとは違う見方をする、つまり、視点を変えることによって理解をうながす、という手法ですね。

さらに、人間が作った技術というものが地球をダメにしている、だから人間は地球のガンだ、という主張に対しても、竹村さんは視点を変えて意見をさしはさんでいらっしゃいました。「僕はね、そうは思わないんだ。おそらく、人間というのはまだ未熟で、だから下手な技術しか作れないんじゃないかな。下手な技術しかないから、地球を壊してしまっている、ということだと思うんだ。」

視点や立場を変えて物ごとを考える。これは、critical thinking の大事な要素です。視点を変えるということは、同じ現象が今までとは違うふうに見える、ということですよね。別の視点を持ち込むわけですから、その現象の解釈にも幅が出ます。そして、解釈に幅が生まれるということは、解決策のオプションも増える、ということにつながっていくはずなのです。

「何が地球をダメにしているのか」という議論も、「人間の作った技術のせいだ」という視点だけだと「だからこれ以上の技術開発はやめよう」あるいは「技術に頼らない生活をしよう」などの解決策しか出てこないかもしれません。でも、「人間はまだ下手な技術しか作れていないんだ」という視点を取り込むと「地球をダメにしない技術を開発するにはどうしたらいいか」という議論も出てくると思うのです。実際、技術がどう地球と共存していくべきなのか、浅学にして私にはわからないのですが、このように視点を複数にすることによって議論に幅が出る、ということだけは言えると思います。

視点を変える/増やすことは、自分とは違う立場にいる人を(可能な限り)理解するためにも、物ごとの全貌を(可能な限り)見るためにも、そして、解決策の可能性を広げるためにも重要なのだと思います。視点を変えて考えるという感覚を、どうやったら子どもたちに効果的に教えることができるのか。また課題がひとつ増えました。

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